名門武田家の根幹をグラつかせた後継者問題
信玄の死は遺言により、隠す方針でいた武田軍。しかし瞬く間に周辺諸国が知るところとなる。信玄の死がもたらした影響はとても多きい。
信玄は在世中に自分の代で完結しなくてはならない、信玄にしか出来ない仕事を残したまま死んでしまってのだ。寿命なので仕方ないのだが、自分が跡取りとして見込んでいた勝頼に愚将としてのイメージを後世にまで残すこととなった責任の一旦はやはり信玄にあると、管理人は考えています。
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信玄が残した武田王国。これは素晴らしい。誰もが認める事でしょう。
しかし負の遺産も大きかった。その負の遺産を追って生きたいと思います。それは内側の組織と外側の周辺諸国への影響です。今回は内側、組織内の問題です。
望まれない社長、武田勝頼
内側の最大の問題。後継者問題。前回の記事で説明した通り、後継者は勝頼です。信玄もそのつもりでいた、だが家臣団達は勝頼を認めていないどころか、危険視してる節もある。
武田軍は清和源氏の流れを汲む武田を中心にそれに付き従う周辺勢力の集まりの連合体です。その結束を強力な結びつきにし、その求心力は信玄が居てこそなのだと思います。
それは信玄だって重々承知していたでしょうし。この構造の中に新参物が入りこみやりくりしていくのは、想像以上に大変です。ましてや、勝頼は諏訪の流れを汲んでいるし親族衆の中に、もっとふさわし人物がいるのでは?と疑念を抱かせてしまう人物です。
もし勝頼を当主として据えるのであれば、家臣団達を納得させる材料と勝頼が主としてこんなにも優れた人物なのだぞというアピールが足りなかったのではないでしょうか?
家臣達は信玄に心酔している為、勝頼がいくら自分を宣伝し「おれは、すげ~ぞ」と虚勢を張った所で家臣団達からすれば「はいはいそうですか」といった冷ややかな反応になるのは当然だ。
勝頼を社長としてある程度の所までプロデュースしてやるのは信玄の力が必要不可欠で、信玄にしか出来ない事だ。この社長交代の準備段階で信玄は死んでしまった。
その結果、武田家中では、信玄の意思なのだから仕方ない。納得はできないが信玄公の言うことだら・・・・こういった空気のなかで勝頼は社長になる。
亡霊なった信玄。なお組織を牛耳る
家臣団達はその後も信玄の言葉に従い続ける。勝頼は勝頼なりに自分のビジョンを持っていた。おそらく勝頼が一番危惧していたのは、組織の老朽化だった思われます。特に織田家の飛躍には今の武田軍のままでは・・・と焦っていたでしょう。
しかし家臣団達は勝頼のやる事なす事に、「先代であれば・・・」「軽々しく古きを破ってはいけません」「信玄公はそんな事はしません」「信玄公は信玄公は・・・・」
武田家の人々はリアルタイムに生きる人間ではなく居ない人間のイメージに服従し勝頼ではなく、亡霊に指示を仰ぎ従っていたのだ。
これが信玄が残した負の遺産の一つだと思います。
しかし、勝頼はそんな中で一生懸命家臣達に認めてもらおうと涙ぐましい努力をしています。組織を動かすには、彼ら信玄子飼いの重臣達の戦力が必要不可欠だからです。
新社長武田勝頼による新生武田軍
それでも重臣達の価値観は変えられません、苦楽を共にし成功に導いてくれた信玄を神格化してしまうのは人間とし当然の心理で、ここに勝頼という新参者、諏訪の人間であるよそ者に入り込む余地は無いのです。
勝頼が優秀であろうが愚かであろうが、又は別の人間であろうが、武田家のリーダーは信玄以外にはありえない人間関係になっていたのです。
信玄から脈々と続く負の連鎖だ。勝頼の自尊心はボロボロだったでしょう。
やがて、勝頼は彼らを納得させるには、大きな結果すなわち戦果が必要だと、強烈に思うようになります。その為には自分の政策を実現する為に動いてくれる人間を求め、YESマンを近くに置き古参を遠ざける方向に走ります。
こうして、武田家は内部に爆弾を抱えたまま、新生武田軍として動き出すのだ。
次回につづく
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