主将の右腕、軍奉行
戦をするにあたって、軍は強靭な連携を必要とします。その連携を司るのがその軍の主将ですが、主将の傍らには、必ず軍奉行という役職に付く人物がいました。
戦では一般的に主将が指揮をとることになるが、何らかの理由で、指揮を代行する者を軍奉行とする。例えば、主将が出陣していない軍、また主将がまだ若く経験が乏しい場合等、ケースは様々だが、主将より、軍の指揮権を委ねられ、いっさいの責任を負う役職である。
「武家名目抄」の文中にもでてくるが、義経を連想するとわかりやすいかもしれない。源氏の主将は頼朝であるが、平家討伐軍の総大将に義経を任命する、現場での判断、軍の指揮全般の権限は義経に委ねられる形である。実際に源平合戦のころに軍奉行という呼び名はありませんが、このように本来の主将に代わり、軍の統括をおこなっていたのが、軍奉行と呼ばれる役職の役割です。
さらに時代が進むと、軍奉行と類似する、武者奉行という役職も登場する。軍奉行の次にランクされる役職だ。しかしこれらは、それぞれの家ごとにばらつきがあり、武者奉行と軍奉行が同じ役割を果たしていたり、武者奉行が置かれているのに軍奉行がなかったり、またその逆もある。そのため、この二つの役職は同じ意味合いで使われていて、呼び名だけが違っているようです。
戦国時代の武田家にも武者奉行の名がみられ、「甲陽軍艦」にると、(武者奉公行とは、御大将へ弓矢の助言申すものなり)となっており、主将がいる場合は作戦プランの相談役、プランの提供も行っていたようである。
最近だと、よく”軍師”という言葉が使われるが、これは後世の物書きが作り出した創作であり、実際には軍師という役職は存在しない。例をあげると、竹中半兵衛や黒田官兵衛、山本 勘助等沢山の人物たちを軍師と呼びますが、これは間違いです。恐らくこういった軍奉行や武者奉行、軍事的な助言、発言、を主将から相談を受ける者達を、軍師という呼び名で呼んでいるようである。
スポーツのチームに置き換えるとわかり易いかもしれません。主将(総大将が監督)、副将(副監督)、軍奉行(ヘッドコーチ)とすると、わかりやすいかな?どうでしょう・・・・・・・ちょっと強引かも・・・、監督、副監督が不在の場合、ヘッドコーチが監督に一時昇格し、試合を行うといったかんじでしょうか。
一般的なイメージで戦の具体的な戦術の部分の担当のように感じてしまうかもしれませんが、もちろん、それも含みますが、軍奉行は、あくまで全軍の管理進行の把握と運営です。たとえば、日時までに規定の人数を招集したり、予定日までに、戦場に到着させられるよに、調整をおこなったり、等など軍に必要なことすべてに責任を持つポジションです。主将がこれこれこうしたい、なんとかしくれと言われれば可能な限りで実現できるよう調整し、また下からの状況を主将に伝え現時点で可能な戦術プランを助言したりするのです。
軍奉行は、大変重要なポジションのため、経験豊かで、戦の全体を的確に把握できる、腹の据わった優れた人物が付く役職なのです。