陣中で乱暴狼藉を禁止する制札。これには何の意味もない。

横行する、乱暴狼藉、略奪

軍の編成 組織 役職

戦時下において、戦場となった土地では、略奪(詳しくは)が横行する。武士でない者には、戦争に参加した所で、相当な活躍が無い限りなにか恩賞があるわけでもない。その為武士でない兵隊達にとっては現地での略奪こそが、主な収入原であった

これは、何も特別なことではなく、何処の軍もこうやって下級兵達を養っていたのです。下級兵とは農民でその中に夫丸や陣人(詳しくは)そして足軽などに配属されている者達、その他には戦争を生業にして戦場があるところに出向く傭兵のような連中が主だったメンバーでした。

しかも軍を構成する人員は武士よりもこの下級兵の方が圧倒的に人数が多いのです。戦をうまく展開するには彼ら下級兵の士気が大いに影響するため、彼らのニーズを無視した軍律を定めるわけにはいかなかったのだ。ニーズとは現地での乱暴狼藉を黙認することだ。

しかしこういった、乱暴狼藉や略奪は人道上大変問題のある事だ。当然これらを快く思わない将も沢山いるわけで、陣中ではこういった人道上問題のある行為を禁止する札を建てこれを取り締まるとする警告を促すのだ。   が・・・・

これは、完全な建前だ。これを厳格にし片っ端から取り締まれば誰も軍事に真面目に従事しなくなり、士気はガタガタになり軍を維持できなくなるからだ。

戦争が何かの形で停滞し、戦闘がない状態になると。何日間か暇を与えられることがある。そのとき下級兵達は付近に集落があればそこに向かい略奪を始めるのだ。これを将達は黙認していたが、必ず定められた日に帰還さえすれば、何かを咎められたりはしなかったようだ。

下級兵達も農民ではあり、自分達の土地が戦場となるその苦しみは知っているだろうが、食う為には略奪行為をして、銭や米、俵、人等を奪うほか無かった。

こういった問題は、下級兵だけにモラルの良し悪しを問うのは、現在の私達の価値観からの尺度である。それだけ人々の生活が困窮していたことを物語っていて、敵地の資源財産を奪う事で国を維持していたのだ。全国の大名や領主達も常に国内の飢饉という大問題に悩まされていたようです。これは特に戦国時代で深刻だったようです。

戦争をするに当たって軍律は大変重要だ。戦局を乱す違反者には厳罰に処されるのが常である。しかし上に書いたような略奪行為を取り締まる軍律に関しては非常に難しい問題でこれを取り締まる事が出来ない事情が当時の軍団事情だったのです。

陣中にて土地での乱暴狼藉を禁止する制令は、建前として置かれ、それには何の効力もなく下級兵による乱暴狼藉を将達は黙認していた。戦局を乱すような行為でなければ、スルーされていたようだ。

下級兵達も自分の故郷が戦場になれば、たちまち狩られる側に立たされるのだ。

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